ピアノ上達法 短期間でマスターする方法

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楽譜の選び方

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原典版は本当にいいのか
 
一時期日本で原典版ブームが起きました。犬も猫もヘンレ版をはじめとする原典版を小脇に抱え、いっぱしの音楽家を気どっていたものです。

今はその風潮も無く、校訂版(実用版ともいう)が見直されるようになってきました。

しかし考えてみれば原典版はそんなにいいのでしょうか。

 

バッハを例にとってみましょう。例えばヘンレ社の楽譜を見ると、バッハが書いたと思われる最小限の音と若干の装飾記号が書かれてあるだけです。この楽譜をいきなり渡されて「勉強しておいで」といわれても、途方に暮れるだけではないでしょうか。そこからさまざまな表現を想像するとなると、相当な経験を積んでいないと無理でしょう。私もまだヘンレ版が普及していない時代に船便で取り寄せてはみたものの、困って結局ブゾーニの版に書かれてあるいろいろな記号をヘンレ版に書き写して勉強したという記憶があります。何のことはない、音だけヘンレで表現はブゾーニということになります。

 

しかしまた、どうしていろいろな楽譜があるのでしょう
ショパンの場合はどうでしょうか。ショパンは生前三つの出版社と契約していたようです。作品ができあがるとA社に渡すために清書します。一方B社にも同じものを渡すために別に清書します。そのとき何らかの間違いが起きることがあります。さらにC社に渡すための清書を頼んだ友人が小さなミスをしてしまいました。他方、渡された出版社が、印刷の版下を作るときにまた間違えました。そんなことの繰り返しが日常的に起こっていました。

 

現在出版される楽譜には底本があります。その底本に何を使うかによってできあがる楽譜に微妙な違いが生じます。その結果同じ曲でもいろいろな楽譜が存在するのです。

 

ショパンの楽譜では最もポピュラーなのがパデレフスキ版ですが、充分な資料を収集できないまま、両大戦間に編集作業が始まり、現在まで小さな修正を加えながら出版されてきました。ところが最近ではその欠点を修正すること、およびショパンが書いたものに一番近い楽譜を作るという目的でエキエル版が出版されています。ワルシャワ・ショパン音楽院のエキエル教授による校訂です。

 

また、楽譜選びには見やすさも大事で、同じ曲でも出版社によってずいぷんと見やすさが違います。「A社のは見やすいけど、B社のは見にくい」「C社の楽譜で弾いていると何だか難しく感じる」というような経験はありませんか。

また紙が白すぎて目が疲れるとか、すぐに装丁がバラバラになったり、印刷がときどきかすれているとか。

 

日本の楽譜はきれいすぎるくらいですが、外国には粗悪な紙を使った不鮮明な印刷の楽譜がたくさんあります。また逆に、装丁が立派すぎて持ち運びに苦労することもあるようです。楽譜は軽くて丈夫で、紙は白すぎず、見やすいレイアウトで、装丁がほどけないのがよいですね。紙が厚すぎて、練習しているうちにページがひとりでに戻ってしまうというのも困りものです。


楽譜は英知の結晶
楽譜は「音楽の設計図」です。原典版は作曲家が書いた設計図をそのまま清書したものと考えればよいでしょう。それに対して校訂版は校訂者がその設計図の読みとり方を、苦労して誰にでもわかるように解き明かしたものと考えることができます。その觧き明かし方にはいろいろな方法があるので、複数の校訂版が存在します。したがって、どちらにせよ楽譜は作曲家と校訂者を中心とする多くの人たちの努力と英知の結晶です。

 

皆さんにもそれに盛り込まれていることを余すところなく読みとっていただきたいものです。楽譜には敬意を持って接してください。